今日も変わりなくソラは赤い。
まったく、憎たらしくなるほどだ。

(だって僕は毎日こんなソラを見てるんだ!
そうなるのって、当然のことじゃないのかな?)

真っ赤なソラ。
赤い赤いソラ。

(なんて赤いんだろう、などと僕は感心している)

白かった翼は見る影も無くなって、ずたずたに切り裂かれている。
ソラの周囲には同じように赤く染まった羽根が散らばっていた。

(この羽根を使って羽根ペンを作ってみようかな。
きっと綺麗な赤い文字が書けるんだろうね!)

薄暗い檻に似た部屋で、ソラだけが赤くて、白くて、とっても綺麗。
周りには誰もいない。
僕と彼の二人きりだった。
僕はいつでも彼を殺すことが出来る。
しかし、僕はそれをしなかった。

(だって勿体ないんだもの!
こんなに綺麗な、まるで天使みたいな彼を殺すなんて!)

僕はそっと彼の頬に触れた。
まだ温かい。
まだ生きてる。

「どうした、今日も殺さないのか」

ソラが静かに口を開いた。

(今日も、というのは僕が毎日のように彼を真っ赤に染めているからだ。
だって綺麗なんだもの、殺したくなんかないよ)

「そうか、今日も俺はこのままなのか」

ソラは小さくため息を吐いた。
今日もソラは死にたがりだ。

(そりゃあさ、死んだらこのいかれた世界からは解放されるんだろうけど!)

「お前は俺を殺してくれないんだな」

ソラは小さく首を振って蹲った。
傷を治そうとしているらしい。

(嗚呼、今日も真っ赤で綺麗だね。
そんな君の姿が一番好きだよ!)

「まあいいさ、俺はこうやって俺を殺してくれる奴が来るのを待つだけだ」

ソラの翼には治癒能力があるらしい。
それこそ、僕くらいの能力者じゃないと傷一つ付かない。

(もしも君と僕がこの檻の外で出会ってたら、いい友達になれたかな?
ううん、きっと無理だね!
僕は真っ赤に染まった君が好きなんだもの!)

「お前が俺を殺さないのなら、いつか俺がお前を殺すよ」

蹲っていたソラが、ふと思い出したように顔を上げた。
独り言にも聞こえたし、僕への宣戦布告とも取れた。

(ええっ、僕を殺すだって!?)

僕は目を丸くしてソラを見た。
ソラは猫に似た金色の瞳で僕を見ていた。

(それって、なんて素敵なんだろ!)

僕は感激して、再び蹲っていたソラの脇腹を思い切り蹴り飛ばした。

(ああっ、また血を吐いたよ!
またソラの白い服が赤くなった!
なんて綺麗なんだろう!)

気分が高揚した僕は、倒れたソラの顔面を思い切り踏み躙り、そのまま満足そうに歌を歌った。



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