無事に会議も終了し、一度に帰宅して怪しまれないよう時間差で帰ることになった。
一番に帰ってきたのはゼロだ。
明日のことをルルーシュに伝えておくためらしい。
「ルル」
「ん?」
探すまでもなくルルーシュはキッチンで夕飯を作っていた。
咲世子もそれを手伝っている。
「少し話があるんだが……」
「ああ、ちょっと待ってくれ」
ルルーシュが咲世子に一言断り、エプロンを脱ぎながらゼロの方へ小走りで近寄って来る。
エプロン姿のままでも構わないのに、と思ったが、スザクと違って口には出さない。
「明日は暇か?」
「五時から会長に呼ばれているが……それ以外なら暇だな」
そうか、とゼロは返した。
明日の予定を伝えなければ。
「会長に呼ばれた以外の時間、明日は一日空けておいて欲しい。
皆がお前の誕生日を祝いたいそうなんだ」
それを聞いてルルーシュは目を丸くした。
会長主催のパーティで一度に祝うと思っていたらしい。
「……不都合でもあるのか?」
ルルーシュが黙り込んだのを否定と取ったゼロは、少し困ったような顔をした。
あまり見ない表情のせいか、ルルーシュは少し慌ててしまう。
ルルーシュの困り顔に弱いゼロだが、逆もまた然りのようだ。
「い、いや、特に……」
「そうか?」
ルルーシュの言葉を聞き、ゼロの表情が弛んだ。
そんなゼロを見て、ルルーシュも照れたように目を逸らす。
「じゃあ、明日は楽しみにしてるからな」
咲世子に任せっきりでは悪いと、ルルーシュがエプロンを着け直す。
夕飯の準備へと戻ろうとするルルーシュの腕を、ゼロは思い切り引いた。
バランスを崩したルルーシュがゼロにもたれかかる。
「お、おい……」
「ルル」
文句を言おうとしたルルーシュの言葉は簡単に遮られてしまった。
自分より幾分低い声で耳元で名前を呼ばれ、思わず胸が高鳴る。
「日付が変わったら、すぐに私のところへ来い」
そう囁き、ゼロはルルーシュを解放した。
「ゼロ」
ゼロが自分に対して滅多に使わない命令口調に、ルルーシュは内心驚いていた。
「引き止めてすまなかったな」
何事もなかったようにゼロは部屋へ戻って行った。
本当はゼロ自身も恥ずかしかったらしく、幾分早足だったが、ルルーシュは気付いていないらしい。
扉の閉まる音がやけに大きく響き、ゼロの姿が見えなくなる。
「……恥ずかしい奴め」
ルルーシュは顔を真っ赤にしたまま、扉に向かって小さく頷いた。