「馬鹿かお前は。
あのラインを間近で見たいとは思わないのか?」
「馬鹿はどっちだ!
どうせ踏まれるなら靴下なんか邪魔じゃないか!」

あれから一時間。
二人の議論は更に白熱していた。
スザクはナナリーに悪い知識が増えないよう、ナナリーにモコモコの耳当てを貸している。
ゼロは「頭が痛くなった」と言い、五分ほど散歩へ出た。

「…………」

スザクはそんな二人のやりとりを黙って見ていた。
二人は飽きもせずルルーシュの脚線美について討論中らしい。
本当に、よく飽きないものだ。
溜め息を吐こうとしたスザクの脳裏にある考えが浮かんだ。

「僕もC.C.と同じかな」

スザクはそう言いながら立ち上がった。
途端に二人は驚いたような顔をする。
無理もない、今までだんまりを決め込んでいたスザクが突然加勢したのだから。

「どういう意味だ」

ロロがスザクを睨む。
その鋭い視線に怯むことなく、スザクは笑った。

「だってルルーシュの脚なんて、体育の時とかいつでも見てるし触ってるし」

その言葉を聞いた瞬間、ロロの周囲の空気が変わった。
スザクを睨みつける眼光は更に鋭さを増している。
その反応を見て、単純だな、とスザクは心の中で笑った。
スザクはロロを挑発し、彼を自滅させることを思い付いたのだ。
彼はルルーシュのことになると何をしでかすか分からない。
もしも掠り傷の一つでも負えたら上々だ。
スザクは確信していた。
ロロよりは自分の方がルルーシュとの付き合いはずっと長い。
もしも犯人が分からなくとも、怪我をした親友を彼が放っておけるか……。
答えは明白である。

「お、おい……」

C.C.がたしなめるように二人の間に立ちはだかった。
彼女はからかい半分だったのだろう。
場の雰囲気が変わったことに驚きを隠せないらしい。

「いい加減にしろ、そんな下らない――」
「下らなくない!」

これでもスザクは一応、ルルーシュの大切な親友である。
そんな彼に何かあってはルルーシュやナナリーが心配に心配を重ねるのは目に見えている。
C.C.が止めようと口を挟むが、ロロは引き下がろうとしない。

「兄さんの脚を触った……だって……!?」
「それに体操服に着替える時は上から下まで舐めるようにルルーシュを視姦し放題だから、今更脚くらいどうってこと」
「そんな羨まし……じゃなくて最低なことを!」

ロロがナイフを取り出す。
まさにここまではスザクの思惑通りだ。
しかし、彼の予想外のことが起きた。

「何をしているんだ!」

一つ目は、ゼロが思ったより早く戻って来たこと。
もう一つは――

「ロロお兄様、止めて下さい!」

ナナリーが止めに入ったことである。



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