「全員揃ったようだな」

円形のテーブルに座る面々をぐるりと見渡し、ゼロは最後に席についた。
メンバーはスザクが予想した通りである。

「今日集まってもらったのは先日告げた通り、ルルーシュの誕生日について議論するためだ。
皆ルルーシュと誕生日を過ごしたいのは変わらないだろう。
だが、残念ながらルルーシュは『皆と過ごしたい』らしい。
そこで私は提案したい。
十二月五日は互いに譲り合い、ルルーシュと二人で過ごす時間を分け合うことを」

なるほど、確かに互いにルルーシュを奪い合うような事態になれば、困るのはルルーシュ本人だろう。
やはり彼は自分よりルルーシュのことを第一に考えているらしい。
敵ながら少々感心してしまう。

「誰もが平等にルルーシュと過ごすことが出来る。
悪くはないだろう?
先日言った通り、この提案に反対する者は今すぐここを出て行ってもらおう」

C.C.がピザを頬張りながらゼロをちらりと見た。
そして口元に付いたチーズをすくい取り、口を開いた。

「そんな者がいれば、初めからここには来ていない。
さっさと始めたらどうだ」

彼女の言葉通り、席を立つ者はいない。
ゼロは頷き、笑みを浮かべながら宣言した。

「では、会議を始めよう。
お互い譲歩し平和的にな」




「今回話し合わなければならないのは大きく分けて二つになる」
「まずは自分の希望の時間かな」

ゼロの隣に座っていたロロが手を上げた。
その言葉をゼロが肯定する。
そちらにはスザクも気付いていた。
しかしもう一つが思いつかない。
スザクが首を捻っていると、彼の隣にいたナナリーが自信なさげに呟いた。

「あの……プレゼントですか?」

その通り。
ゼロが再び肯定した。
さすがはルルーシュの妹、聡明な子だ。
スザクは内心舌を巻いていた。

「せっかくのプレゼントが誰かと同じ物ではルルーシュにまで迷惑をかけてしまう。
そこで予め互いの手の内を晒しておこうと思う」

同じ物なら先に渡す方に分がある。
それでは公平さを欠く、とゼロは付け足した。

「ちなみに私は例年通りケーキ作成に励むことになっている。
よってケーキ、もしくはそれに準じるものは却下しておこう」

世界を騒がせるテロリストも、ルルーシュの為ならパティシエに早変わりのようだ。
そういった意味では、ある意味世界を支配するのはルルーシュかもしれない、とスザクは苦笑した。

「僕はこれだよ」

ロロがじゃんっと何かを取り出す。
よくよく見るとそれは黒と赤が基調のフリルだらけの洋服だった。

「兄さんにきっと似合うと思って!」

確かに彼の可愛らしい笑顔でこれをプレゼントされてしまったら、プライドの高いルルーシュでも一度くらいは着てくれるかもしれない。
スカートの丈が短いのは滅多に見ることの出来ないルルーシュの脚をしっかりと目に焼き付けるためだろう。

「あの、私もお洋服なんです」

ナナリーが言いにくそうに何かを取り出す。
目を凝らすと、黄緑色のユニークなカエルの着ぐるみパジャマだった。

「お兄様にきっと似合うと思って、つい……」

ナナリー、まさか君、目が見えてるんじゃないのかい。
スザクはそう口に出して言いたいのをぐっとこらえた。
そして「僕はまだ決めてないよ」とC.C.に話を振った。

「私か?私はこれだ」

C.C.がニヤリと笑いながら謎の小瓶を卓上に置く。
その中には明らかに怪しい紫色の液体が入っていた。

「効果は当日のお楽しみだ」

ククッとC.C.が笑い、早々と小瓶をポケットへと戻す。
中身を悟られないようにするためらしい。
やれやれ、一体何をプレゼントすればいいんだろう。
服はすでに渡す人間が二人もいるので避けるべきだろう。
そこで気になるのはC.C.だが、中身がまったく推測出来ない。
本当に自分はどうしようかとスザクが腕組みをした瞬間、ふるふると肩を震わせていたゼロが立ち上がり、叫んだ。

「――お前達、本当にルルの誕生日を祝う気があるのか!?」

もっともな意見である。
スザクは珍しくゼロに同情した。



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