「とにかくプレゼントを考えないと……」
スザクは頭を抱える。
ルルーシュは何をあげれば喜ぶのだろう。
彼に直接聞いたのでは意味が無い。
しかし、これと言って思い付くものがないのも事実だ。
誰から何を貰ってもきっと彼は同じように喜ぶだろう。
こういう時は、鈍感な彼を恨まずにはいられない。
どうすれば他とは違い、彼の印象に残るプレゼントを渡すことが出来るのだろうか。
「最初に渡す、とか……」
そうだ、一番に誕生日を祝えばきっと彼の印象に残るだろう。
スザクは何度か頷いたが、すぐにまた額を押さえた。
「……駄目だ」
あの家には奴らがいる。
ルルーシュと瓜二つの少年、ゼロ。
ルルーシュの弟、ロロ。
ルルーシュ命のあの二人を出し抜き、最初に誕生日を祝うのは限りなく不可能に近い。
一緒に住んでいるのだから、あちらが有利に決まっている。
ナナリーやC.C.がそれとは意識せず、一番に彼に「おめでとう」を言う可能性もある。
ああもう、とスザクは苛立った声を上げた。
そもそも計画を立てて行動するのはあまり得意ではないのだ。
その自分が計画性の塊のあの悪魔に勝る計画を立てることなど、天地がひっくり
返ろうと出来はしないだろう。
スザクが溜め息を吐くのも仕方のないことである。
だが、じっとしていても前には進まない。
せめて良さそうなプレゼントを探そうとスザクが立ち上がった時だった。
「……ん?」
電話の音が静かな部屋に鳴り響いたのは。
一体誰からだろうか。
スザクは首を傾げながら、ボタンを押した。
『私だ』
一瞬ルルーシュかと期待したが、ゼロの方だった。
二人は声まで似ているので、スザクといえど一瞬で聞き分けるのは難しい。
「何の用だ」
『取引しないか?』
お互い犬猿の仲だということは分かっているので、自然と会話も短いものになる。
だが、その中で発せられた言葉に、スザクは眉をひそめた。
取引とは、一体どういうことだ?
『簡潔に言おう。
私はルルーシュと二人で誕生日を過ごしたい。
だがしかし、ルルーシュは違うらしいのだ。
ルルーシュはお前やロロやナナリーやC.C.……つまり、皆で誕生日を過ごしたいと言う』
だろうね、とスザクは肯定した。
ルルーシュの性格や周囲の態度を考えれば、特定の一人と過ごすことなど有り得ない。
出来る限りルルーシュと二人っきりで誕生日を過ごしたいところだが、誰もがそう思っている以上必ず邪魔が入る。
『私はルルーシュの言葉を尊重しようと考えた。
しかし、邪魔が入らずルルーシュと過ごせる時間は欲しい』
珍しく正直なゼロに、スザクは電話越しに頷いた。
似た者同士であるが故の犬猿の仲だ、やはり考えることは同じらしい。
『そこで、私はルルーシュと過ごす時間を分担しようという考えに至った。
はっきり言ってお前達と譲歩し合うことなど避けたいのだが、ルルの為だ……仕方がないだろう。
一度、一堂に会して互いに話し合おうと思うのだが』
お前達、という言葉からゼロが他の数名にも声をかけていることが容易に推測出来る。
スザクは声には出さず、笑った。
お前も必死だな、ゼロ。
「……分かった。
今回は互いに譲り合うしかなさそうだ」
スザクは日時と場所を手近な紙にメモを取り、電話を切った。
おそらく、譲歩をする余裕も無い、殺伐とした会議になるだろう。
互いに腹を探り合い、潰し合いをすることは火を見るより明らかである。
ゼロには勝てずとも、他のライバルは一人でも少ない方がいい。
そちらの方が自分がルルーシュと過ごす時間が延びるからだ。
「大体メンバーは想像出来るけど……」
スザクは再び頭を抱え、溜め息を吐いた。
この決戦に、すべてがかかっている。