今日は僕の誕生日、なんだけど……兄さんはすっかり忘れてるみたいだ。
わざとらしく携帯のロケットを撫でたりしてるんだけどなぁ……。
もちろん、最近忙しかったし、忘れてたって仕方ないと思う。
別に祝ってもらわなくたっていいんだけど、去年嬉しかった分今年も期待してしまう。
今年は何かもらえるのかな?
去年は可愛いハート型のロケットだった。
ちょっとだけ恥ずかしかったけどね……。
だけど兄さん、こんなものをくれたってことは……もしかして可愛いものが好きだったりするのかな。
……ぬいぐるみとか持ってたら可愛いな。
ぬいぐるみをぎゅって抱いて寝ている兄さん……見てみたいかも。
毎日ぬいぐるみに話し掛ける兄さん。
夜中にトイレに行くとき怖いからぬいぐるみを連れて行っちゃう兄さん。
……可愛い。
いいなあ、見たいなあ。
兄さんがぬいぐるみを抱いてるのがプレゼント、だといいなあ。
あ!可愛いといえば料理中の兄さんも可愛いよね。
ピンクのエプロンで料理してる姿なんか、まるで新婚さんみたいだよね。
後ろから抱きしめたくなるのは僕だけじゃないと思う。
兄さんがあの格好で僕の為にお菓子なんか作ってくれたら……うん、それもいいなあ。
兄さんは料理も上手だし、きっと美味しいお菓子になるんだろうなー……。
でも兄さん、ちょっとドジだから自分の顔にも生クリームが飛んじゃってたりして。
ドジといえば兄さん、この間体操服を裏表に着て真っ赤になってたっけ。
兄さんったら……。
……体操服?
兄さんの体操服?
兄さんの血と汗と涙の染み込んだ体操服!?
だ、駄目だよ兄さん!
そんなもの貰う訳には……!
い、いや、兄さんの体操服が欲しくない訳じゃないよ!?
むしろ欲しいよ!欲しいけどそんな……!



「ロロ様」
「な、なんだよ咲世子!」
「声に出ています。
ルルーシュ様もお引きになっているのでそのくらいに……」

……え。

「出てた?」
「ああ」

声に、出てた!?

「ご、ごごごごめんなさい兄さん!
想像の中で兄さんを汚してしまって!
僕はその……!」

最低だ、僕!
兄さんで最低な想像を……!

「すまない、ロロ。
プレゼントが遅れて寂しかったんだな……」

……あ、あれ?

「別にお前の誕生日を忘れていたんじゃないんだ。
ただ、いつ渡そうかと……」

結果オーライ?

「少し遅くなったが、誕生日おめでとう、ロロ」

そう言って兄さんは僕に小さな箱をくれた。
中には……。

「腕時計?」

シンプルだけどワンポイントが可愛らしい、使いやすそうな腕時計が中に入っていた。

「何かとお前には必要だろう?」

気に入るといいんだが、と兄さんが微笑んだ。
兄さんがくれたものだもん、気に入らない訳がない。

「ありがとう兄さん!」

兄さんは頷いて笑ってくれた。
僕の力には時間が関係してくる。
だから役に立つだろうということだ。
兄さんが僕のことを考えてくれるなんて……。

「ロロ様、私からも」

咲世子が同じように袋を差し出した。
カラフルな袋の中は見えない。

「お部屋に戻ってから開けて下さいね」

兄さんも僕も首を傾げた。
どうしてここじゃ駄目なんだろう……。
その謎は袋を開けて初めて解けた。
中に入っていたのは兄さんの血と汗と涙が染み込んだ……

「咲世子――っ!!」

おわり。



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