この世界は、線と円のみで創られている。
Re:
「どういう意味だ?ゼロ」
ルルが訝しげな表情をする。
コンピューターなどに用いられている二進数のことだ。
モニターに映るすべての世界は線と円のみで構成されている。
「この世界がデジタルではないという確証がどこにある?」
私達は、夢を見ているかもしれない。
1と0の世界に踊らされているのかもしれない。
「お前の名前にも入っているじゃないか」
私は宙に指で彼の名前を書いた。
Lelouch。
二つ目のルは、線と円で創られている。
「そしてゼロ。それが私の名前だ」
0。
存在しないことを示す数字。
存在しないことを示す為に、そこに存在する記号。
まさに私のことだ、と思った。
「私はここにいる。
だが、この世界に私の身体は無い」
「俺の身体があるじゃないか」
「それはお前からの借り物であって、私の物ではないだろう」
そしてその身体もどうやって動いている?
脳が動けと命じるからだ。
どうやって?
信号を伝達するんだ。
「人間の仕組みも、デジタルと同じじゃないか」
ニセモノだらけの世界。
私達は、『本当』にここにいるのだろうか?
「この目に映る景色が、線と円で創られた物ではないと誰が証明出来る?」
誰にも出来ないはずだ。
そして、誰もがそれを疑って生きている。
目の前の少年、ルルーシュも。
「俺は信じている。
少なくともこの世界でお前はニセモノではないと」
おかしなことを言う、と私は笑った。
誰よりも曖昧な存在で、存在しているかどうかすら危うい私がニセモノではないと?
「ゼロ」
ルルはそっと手を伸ばした。
そして私に触れながら、微笑んだ。
「0という無を表す数字は、この世界に存在しているじゃないか」
私は、ここにいるのだろうか。
少なくとも、ルルの世界には。
「ああ、そうだな……」
重ねたその手から、温かさが伝わってきた。
これも、脳へと送られる信号。
信号など使わずに、この脳に直接彼の温もりを感じられればいいのに。
「有難う、ルル」
そう願いながら、私はルルーシュの額に自分のそれをコツリと当てた。
少しでも、彼の温もりが直接伝わるようにと。