◇◆



 ふわりと広がる紅茶の香り。丁度良い快適な室温。柔らかいソファー。自分の部屋には無いゆとりある空間。
 その全てを楽しむように、三好は深呼吸した。
 反対に、向かいに座る男は溜め息を吐く。不快感から出たものではなさそうな、複雑な感情の入り混じったような溜め息。
 もちろんそれは三好の主観で、実際のところは分からない。
「ねえ三好君」
「はい」
 三好は微笑みを浮かべ、姿勢を正して返事をした。あまりにも礼儀正しい返事に、男がほんの一瞬、眉間に皺を寄せる。
「一昨日……いや、正確には昨日から池袋がおかしなことになってるんだけどさ、知ってる?」
 男はPDAの画面を三好に向けた。画面にはウェブサイトが表示されている。見覚えのある池袋の街の風景と、昨日の日付。そしてでかでかと書かれた「池袋で河童を探すオフ会」という文字。馬鹿馬鹿しいタイトルに反し、写真にはそこそこの人数が写っていた。
「まあ殆どが河童なんて信じていない、お祭り騒ぎをするために集まった人間ばかりなんだろうけど。それにしても凄いよね。たった一人のちっぽけな人間の発言でこんな騒ぎが起きるなんてさ」
 三好は特に何も答えなかった。ただ、表情を変えずにPDAの画面を一瞥しただけだ。
 男は気にせずPDAを自分に向け、少し操作する。そして苦笑とも嘲笑とも取れる笑みを浮かべた。
「どうやらこの間の切り裂き魔事件にかけて『カッパーナイト事件』って名前で呼ばれてるらしいよ? そんなの誰が考えるんだろうね」
「あはは。それはまた、酷い名前ですね」
「うん。本当、酷いよねえ」
 寒いギャグだとしか思えない名前にケラケラと三好が笑うと、男は頷いて同意するような素振りを見せた。そして足を組み替え、大袈裟に肩をすくめる。
「――人を河童扱いするなんてさ、本当に酷いよね。まるで俺が妖怪みたいじゃないか。ねえ三好君?」
 三好はしばらく微笑みを崩さなかったが、やがて堪えきれなくなったのだろう。堰を切ったように笑いこけた。
 彼の前に座っている男は折原臨也。河童でも妖怪でもない、ただの人間である。



◇◆



 三好吉宗は実に器用な人間だった。
 あらゆる話題に精通し、どんな相手とも微笑みを浮かべて会話することが出来る。昔からずっと知り合いだったように感じる、と言われるほどに周囲に溶け込むことが出来る。
 それこそが、両親の仕事の都合で生じた度重なる転校に対応すべく、三好が自然に身につけた能力だった。
 転校した先で仲間外れにされないために、相手を観察し、何に興味があるのかを探る。幼い頃に三好は無意識のうちにそうすることを覚えた。コミュニケーション能力が高い人物だ、と通知簿に書かれ、よく褒められた。
 ただ、その能力が三好に与えたのは良い影響ばかりでは無かった。彼はいつの間にか、相手を観察すること自体に楽しみを見いだしていた。観察されることを喜ぶ人間はいない。なので人懐っこい微笑みを浮かべ、そんなことを微塵も感じさせない術を器用に身につけた。
 ――世界には様々な人間がいて、それぞれ違うことを考えている。なんて面白いんだろう。もっと沢山の人間を観察しなければ。
 そう考え始めた三好は転校することを喜ぶようにすらなった。しかし転校を喜ぶというのは基本的に常識に反するということを彼は知っていたので、それも器用に隠した。両親はそんなことには気付かず、息子に転校ばかりさせて申し訳ないと思っているようだが。
 彼の趣味は自分の周囲だけではなく、遠くの出会ったことの無い人間にまで及んだ。顔も知らない人間と会話することが出来る機械は実に便利だった。それが三好が機械に詳しくなったきっかけだ。こうして彼は趣味の範囲を広げていき、やがてそれは終着する。
 ――僕は人間が好きだ。莫迦な、嫉妬深い、猥褻な、ずうずうしい、うぬぼれきった、残酷な、虫のいい動物。それが面白くて、可笑しくて、愛しくて仕方がないんだ。
 即ち、全ての人間に対する歪んだ愛へと。
 そして幾度かの転校の後、この池袋にやって来た三好吉宗は幸か不幸か、今までに見たことの無いほどに自分と似た考えを持つ人間――折原臨也と出会った。



◇◆



 一週間前

 日直というのは面倒なものだ。日直だというだけで教師は平気で雑用を押し付けてくる。たまたまいつもより黒板が汚れていたりすれば最悪だ。
 ――今日の日直は、ええと、三好か。
 黒板の水拭き掃除を命じられた時は内心、帰ろうかと思った。しかしそれをすれば自分の信頼に関わるし、代わりにクラス委員の帝人か杏里に押し付けられるのだろう。二人は大事な友人だ。
 三好は元気よく返事をし、木枯らしの吹く季節にも関わらず、冷たい雑巾で黒板を端から端まで綺麗に拭いた。
 今は冬が目前に迫り、あっという間に日が落ちる。終わった頃には既に外は暗くなっていた。早く家に帰ろうと三好は早足で歩く。
 ――あれ?
 そんな時に、どういうわけか、三好は臨也を見つけた。
 臨也は複数の男と何かを話しながら歩いている。また何か怪しい取り引きだろう、と三好は判断した。臨也が池袋で何かの取り引きをしているのはよくあることだ。三好も何度か見かけたことがある。
三好は好奇心から、後をつけてみることにした。臨也と男達はどんどん人通りの少ない方へと歩いて行く。しばらく歩くと、まったく人気の無い工事中のビルへと入り、男達は足を止めた。三好も後に続いて物陰に隠れる。
 ――しかしどうも様子が変だな。
 様子を見ながら、三好は首を傾げた。複数人の中でもっとも高級そうなスーツを着た男が臨也に対して怒鳴っていたからだ。あれでは取り引きというよりはまるで、男達が臨也を脅しているように見える。
 ――あの折原臨也が脅されてる? これは珍しいものが見られるかもしれない。
 三好は心の中でせせら笑い、一旦そっとその場を離れた。そしてある程度距離を取り、警察に電話した。無論臨也を助ける為ではない。
 相手の声はやけに大きい。この辺りは夜になると人がいなくなるとはいえ、あれではいつ警察が来てもおかしくない。時間を稼ごうと、三好は適当な理由をつけて、正反対の場所を警察に教えた。少しでも長く臨也を観察する為だ。
 それから元の場所に戻り、様子を見た。男は相変わらず元気に怒声をあげている。臨也が何を言っているかは相手の声で聞き取れなかったが、何か相手を苛立たせるようなことを言っているのは確かだ。
 やがて、男が拳を振り上げるのが見えた。思い通りにならない臨也を暴力で従わせることにしたらしい。
 どうせ無駄だろうな、と三好は思った。臨也はいつもあの静雄の攻撃をかわしているのだ。あんな男の拳など簡単に避けてしまうだろう。
「――っ!」
 しかし三好の予想に反し、臨也は殴り飛ばされ、地面に転がった。あっと出そうになった声を抑え、三好は臨也を凝視する。
 臨也はすぐに片手をポケットに突っ込みながら起き上がった。ナイフを取り出すのかと思ったが、そういうわけではなさそうだ。
 何をしてるんだ。いつもみたいに避けたらどうなんだ。三好は苛立ちを覚え、ふらつきながら立ち上がる臨也を睨んだ。面白くないだろ、戦うか逃げるかしろよ。
 三好の思考を遮る、やっちまえ、という男の声。それに応え部下達が一斉に臨也に殴りかかった。
 そこから先のことはよく覚えていない。
 次に三好が見た風景は天井で、場所はベッドの上だった。



◇◆



「やあ、気分はどうかな」
「臨也……さん」
 声に反応して首を動かすと、そこには臨也が立っていた。
 その瞬間、はっと三好は思い出した。確か臨也が殴られて、それで。
「いっ……!」
 慌てて起き上がろうとしたが、それは叶わなかった。身体中が痛い。目には思わず涙が滲む。
 臨也も哀れに思ったのか、三好が起き上がるのに少し手を貸してくれた。ついでにベッドの端に座り、傷だらけの三好を鼻で笑う。
「誰かに見られてる気はしてたけど、まさか君だとは思わなかったよ。てっきりあっちの仲間かと思ったのに。……それにしても、まさかいきなり飛び出してくるとはね。本当に君は予測不可能な動きをする」
 ――飛び出してくる?
 三好は小首を傾げた。
 どうやらここは臨也の家らしい。目の前には殴られたはずなのに無傷の臨也がいる。自分は飛び出したという。身体中が痛い。
 答えは一つしかなかった。
「……なんで僕が?」
「それはこっちが聞きたいよ」
 クエスチョンマークを浮かべる三好に、臨也も怪訝そうな顔をした。
 三好は確かに、臨也を観察しようとしていた。なのに何故か臨也を庇って殴られている。三好は何故そんなことをしたのか、自分でもよく分からなかった。
「そういえば臨也さんも殴られてましたけど……」
「ああ、あれ?」
 心配そうな表情を浮かべる三好とは対照的に、臨也はけろりとしている。あの時はかなりの力で殴られたように見えたのだが。
「上手い殴られ方、っていうのがあるんだよ。見た目は派手に殴られたように見せておいて、ダメージはちゃんと殺してる。三好君もあんな時に飛び出して来るなら、次からそういうのを会得してからにしなよ?」
 臨也の身体能力は高い。会得してから、というが三好が臨也と同じレベルを会得するまでにはかなりの時間がかかることは容易に想像がつく。
「まあ、三好君が来なくてもあの場はなんとかなったんだけどね」
 そう言って臨也は嘲笑を浮かべた。三好は眉をひそめ、僅かに微笑みを崩す。
「あれは商売敵というか、ちょっと俺の仕事の邪魔をしてた連中でね。色々非合法なこともやってる。どうやら俺が邪魔だったらしくて、東京湾にでも沈める気だったのかな。とにかく俺を呼び出してきたんだよ」
 こくりと三好は相槌を打った。
 非合法なことをしている相手に煙たがられるとは、臨也はどんなことをしているんだろうか。そんな疑問が沸いたが、聞いても仕方がないので三好は何も言わなかった。
「そこで俺はこの際だし、ちょっと奴らを黙らせようと思ってね。あらかじめその連中と敵対している集団を味方につけておいたんだよ。敵の敵は味方だからね。場所は向こうが指定してきて分かってるんだから、後はそれを伝えておけばいい。向こうも待ち伏せをかけるつもりだったみたいだし、お互い様だよね」
 臨也は人差し指を立てて得意げに話した。殴られ損だと遠回しに言われている気がする。
「……もっとも、思ったより味方の人達は来るのが遅かったんだけど。どうやらその時にその人達の本拠地の近所で何かタレコミがあったらしい。警察が警備を強化してて、迂闊に動けなくなってたってさ。シズちゃんが暴れてたのかな……。本当にタイミングが悪いよね」
 ――…………。
 三好は内心後悔した。あの電話のせいで、ますます殴られ損だ。自分で自分の首を絞めてどうする。
「まあ、君が盾になって代わりに思いっきり殴られてくれたおかげで、うまく時間は稼げたよ。向こうを挑発したら使えそうな発言が出たし、それを味方の人達に売ってもうひと儲け出来たしね」
 あの時、臨也がポケットに手を入れたのは録音の為だったのか。やはり転んでも殴られても、ただでは起きない人物だ、と三好は感心すらした。
 裏の世界では名の知れた情報屋、折原臨也。三好が彼について知ることは、かなり少ない。確実に分かっていることはただ一つ。この男が自分の同類だということだ。
「――臨也さん」
 三好は決心を固め、臨也の目を見据えた。臨也はPDAを操作しようとしていた手を止める。
「ちょっと待ってなよ。新羅に連絡してあげるからさ」
 三好は臨也の言葉を聞き、反射的にその手を掴んだ。PDAがカタンと音を立てて床を転がる。臨也は一瞬怪訝な顔をしたが、すぐにクスリと笑った。
「ああ、お金のことなら心配しなくていいよ? 後輩に請求するほど俺も守銭奴じゃないからさ。……勝手に飛び出してきて勝手に殴られた君が悪い、とは言わせてもらうけどね」
 三好は首を横に振った。掴んだ手は離さない。臨也が徐々に不快感を露わにし始めた頃、三好は深呼吸し、静かに言った。
「取り引きしましょう」
 あまりにも唐突な三好の言葉に、臨也は顔を上げた。高校生の少年には少し似つかわしくない言葉だ。
 意味を問おうと口を開きかけた臨也を遮り、三好はたたみかけるように続けた。
「新羅さんやセルティさん……いや、誰にも僕がここにいることを言わないで下さい。一週間、僕をここに置いて下さい」
 はあ? と臨也が声を上げた。そんなことを言われるとは思っていなかったらしい。
「それをして俺になんの得がある? 取り引き、っていうのはさ、お互いに利益が出る時しか成り立たないんだよ?」
 臨也の返答は三好の予想通りだった。
 まるで細い糸を手繰り寄せるような気分だ。切れないように、慎重に。
 三好は微笑みを浮かべると、臨也を掴む手とは反対の腕で傍らに置かれていた携帯電話を手に取った。何度かボタンを押し、画面を臨也の方へ向ける。
 アドレス帳らしき画面には、臨也の最も嫌悪する男の名が表示されていた。
「今ここで、僕が静雄さんに連絡したら、どうなると思います?」
 臨也の表情が歪む。頭の回転の早い彼のことだ、すぐに三好が言わんとしていることに気付いたのだろう。
 静雄は三好を可愛がっている。その三好が傷だらけで臨也の家にいると分かれば、烈火の如く怒り、すぐさま臨也を殺しに乗り込んでくるだろう。それは臨也にとって思わしくないことのようだ。
「ただの一般人が俺を脅迫するとはね……」
「取り引きですよ」
 三好は携帯電話を引っ込め、ぐっと握り締めた。いつもの微笑みがどこか挑発的なものになる。
「僕は何一つ喋らない、と約束します。臨也さんが池袋にいたことも、怪しい集団と関わりがあることも、僕が怪我をした理由も、全部。だから僕をここに置いて下さい」
 三好は座ったまま、深々と頭を下げた。
 さあ、どうする、折原臨也。三好はこうべを垂れたまま、固唾を飲んで反応を待った。
「っくく……あはははは!」
 緊張した面もちの三好に対し、臨也の取った行動は、腹をよじって笑うことだった。
「顔に似合わず、とんでもないことを考えるんだね。本当に君は退屈しないよ」
 どうも、と短く三好は答える。臨也の答えはまだどちらか分からない。油断するのはまだ早い。
「っくく……乗ってあげるよ、その取り引き。別にシズちゃんが怖いからじゃないよ? 君が面白いことを言うから、そうまでしてなんでここにいたいのかなあ、って思ってさ」
 臨也の返事は、三好には些か予想外のイエスだった。思わず聞き返すと、臨也は意地の悪い笑みを浮かべる。
「一週間くらいなら、ここにいるのは構わないよ。ただし、君がどうしてそんなことをしたいのか、それを正直に喋ったらだ。それくらいは答えてくれなくちゃ」
 三好は迷った。正直に言っていいものか。
 今まで一度も、誰にも言ったことの無い自分の本質。それをさらけ出してまで、自分は折原臨也を観察すべきなのか?
 しかし、そんな迷いはすぐに消えた。何故なら、臨也が自分と同じ歪んだ人間であることはとっくに確信していたからだ。
「――臨也さんが、気になって仕方が無いんですよ。僕と同じ考えの人間なんて初めて見た。そんな人間にはもしかしたらもう二度と出会えないかもしれない。だから今、ここで、折原臨也という人間を観察したいんですよ。僕という人間と照らし合わせて、どんなところが似ていて、どんなところが違うのか。それが気になって気になって仕方が無いんですよ」
 今まで一度も出したことの無い本当の顔が、堰を切ったように溢れ出した。喋りながら自分が興奮しているのが分かる。無意識のうちに、握ったままだった手に力がこもった。
「ますます気に入ったよ、三好君。まさかそんな人間だったとはね……。でもいいよ、うちにいるといい。俺もそんな君を観察することに俄然興味が出てきたよ」
 始めは豹変した三好に驚いたような顔をしていた臨也も、三好が話し終わる頃には楽しげな笑みを浮かべていた。
 ――ああ、やっぱり、思った通りだ。折原臨也は僕の同類だった。
 三好は謎の安堵感のようなものを感じながら、人懐っこくにっこりと笑った。
 こうして三好は一週間の間、臨也の家に留まることになったのだった。



◇◆



 数日間、三好が過ごして感じたことは、存外臨也も普通の人間であるということだ。
 内容はどうあれ昼間は真面目に仕事に取り組み、夜になるとパソコンをして、適当な時間に就寝。これではほとんど自分と同じではないか。
 別に情報屋の仕事を見学に来たのではない。臨也を観察出来ればそれでいい。とはいえ情報屋、ということで映画に登場するような仕事を少し期待していた三好は肩すかしをくらってしまった。
「波江さん、こっちは終わりましたよ」
 起き上がれるようになってからは、臨也の仕事を邪魔しないよう雑務を手伝っている。臨也の秘書、矢霧波江と共に書類を整理したりする程度の簡単なものだ。それくらいならば捻挫した足を庇いながらでもなんとかなる。
「随分早く終わったのね」
「はい、慣れるのは早いんですよ」
 初めは三好に冷たかった彼女も、この数日で普通に接してくれるようになった。波江がクラスメイトの姉だと知り、そこからそのクラスメイトについて会話するようになったのだ。もっとも、波江が弟を溺愛していることに気付き、彼を褒めるような発言をしたから、というのが大きいのだろうが。
「あ、それは重そうだから僕が持ちます」
「そう? じゃあこれ、お願いするわ」
「はい、任せて下さい。……臨也さんも酷いですね、女性にこんな重い物を持たせるなんて」
 確かに渡されたファイルはずしりと重かった。少しは回復したとはいえ、まだ身体は痛む。片足でうまく支えきれるだろうかと不安になったが、目の前で女性に重い荷物を持たせる方が嫌だった。
「ああ……わざとじゃないかしら。あのうざい雇い主のことだから」
 三好はびっしりと書類の挟まったファイルを順番に並べながら、波江の愚痴を聞いた。
 愚痴以外にも彼女は時々、弟がいかに素晴らしい人物かを語った。大幅に美化や誇張が加えられているだろうが、無口なクラスメイトの人となりについて知ることが出来るのに違いはない。三好は喜んで波江の弟自慢を聞いた。
 波江はそんな三好に気を良くしたのか、毎日のように甲斐甲斐しく傷の手当てを行ってくれた。その間中、延々と弟を自慢出来るからというのも理由の一つだったに違いない。
「波江さんみたいな優しいお姉さんがいて、矢霧君は幸せですね」
 三好は似たような相槌を何度も打って、手当てをされている時はにこにこと笑った。
「――波江さん、ちょっと頼みたいことがあるんだけど」
 そんないつも通りのある日、臨也が部屋に入るなりそう言った。
 今まで恍惚とした表情で弟について語っていた波江は途端に不機嫌な顔になった。臨也は秘書にも嫌われてるのか、と三好は笑い出しそうになる。
 どうやら臨也は何か外にある用事を頼みに来たらしい。波江は不機嫌そうな表情のまま出掛けて行った。三好の手当ての途中で。
 ――せめて最後までやって行って欲しかったな。話もまだ途中だったし……。
「ああ、いいから」
 続きを自分でしようと、波江が置いていった救急箱に伸ばしかけた手を臨也が制止する。何がいいのかと問うと、臨也は笑いながら真新しい包帯を救急箱から取り、数度ぽんぽんと放り投げた。
「俺に任せて大人しくしてなよ、怪我人なんだからさ」
 ――臨也さんが?
 思わず三好は聞き返した。驚いたような声のトーンには、出来るんですか、という意味が暗に含まれている。そしてそれに臨也が気付かないわけがなかった。
「三好君も知っての通り、俺は誰かさんのせいで生傷が絶えなくてね。大抵は新羅に頼むんだけど、俺が罠を仕掛けてみたりしてあっちも怪我した時は、新羅のところで鉢合わせる可能性が高い。だからそういう時は自分でせざるを得ないんだよ」
「そうなんですか」
 静雄のことを話す時の臨也はいつも苦々しい表情を浮かべている。本当はもっと詳しく聞いてみたかったが、それで機嫌を損ねて追い出されるのは困るので、三好は無難な返事を返した。
 ――なら、池袋に行かなきゃいいのに。
 いつも三好はそう思うのだが、それを口にして今後自分がどうなるかが分からないほど馬鹿ではなかった。何より、そういった矛盾を孕んでいる方が人間的で面白いので、観察のしがいがある。
「そうなんだよ。……それにしても、随分殴られたんだね。背中とか凄いことになってるよ? 三好君からは見えないだろうけどさ」
 臨也は呆れた顔で、三好をしげしげと見た。三好からは何も見えないが臨也が言うくらいだ。本当に大変なことになっているのだろう。事実、一番痛むのは背中だった。
「いきなり誰かに押し倒されたと思ったら三好君だったなんて、本当に驚いたなあ。大丈夫だからどけ、って言ったのにさぁ……。人の話を聞かないからそうなるんだよ」
 咎めるような口調で言いながら、臨也は手当てを続けた。専門家である新羅や波江ほどではないが、的確だ。
 ――そうか、それで背中が痛いのか。
 三好は今の臨也の話でようやく合点がいった。あの時のことはよく覚えていない。無我夢中だったからだろうか。
 ――うん? なんで僕が臨也さんのことでそこまで必死になるんだ?
 しかし何故自分が臨也を助けたのか。それが分からず、三好は唸り、首を捻った。助けようなどとは思っていなかった。複数人に囲まれ、殴られた劣勢の臨也がどうするのかを観察しようとしていたはずだ。もっとも、残念ながらあれは殴られたふりで、臨也の演技だったのだが。
 確か殴られていたのは腹だったか。素人にとっては急所だが、テレビの格闘技を見る限り、腹筋さえ鍛えておけばなんとかなるのかもしれない。
 三好はふとそんなことを思い、臨也の服に手を伸ばし、何の気なしにぺろんと捲った。
「…………」
「…………」
 ぴたり、と時が止まったかのような沈黙。
 臨也はあまりに予想外な出来事だったらしく、目を点にしている。包帯を巻くために三好の背中に手をまわした時だったので、すぐに反応出来なかったのかもしれない。
 一方の三好はまじまじと臨也の腹部を見た。男性にしては白い肌に、自分のような殴られた痣は見当たらない。格闘家のように腹筋が割れているわけでもないので、本当に回避していたらしい。きっと天性のバランス感覚が備わっているんだろうな、と三好は推測した。
「……何?」
 三好の手に視線を落とした臨也は心底意味が分からないという様子だ。三好は手を離して先程思ったことをそのまま正直に臨也に伝えた。
「へえ……君は本当に突拍子もない行動を取るんだね。普段はそんなところは少しも見せないのに。それとも、やっぱりこっちが本性なのかな?」
 臨也は愉快そうに笑った。三好の一挙一動は臨也にとって興味深いものらしい。
「それが、僕にも分かりません」
 明るい声の臨也とは対照的に、三好は眉尻を下げ困った顔で答えた。
 普段の三好は空気を壊さないよう常識的な行動をし、その陰で人間を観察して笑っている。相手を観察したり、自分が行動してその反応を見るのは一番の趣味だ。だがそれで自分に危害が及ぶのなら話は別だ。だから臨也が囲まれているのを見た時も、安全な位置から観察しようとしたのだ。
 なのに三好はその考えとは逆に臨也を庇いに飛び出してしまっている。
 一体何故だろう、と三好は腕組みをした。
「はい、手挙げて」
 しかし臨也にそう言われてしまったので、バンザイをした間抜けな格好のまま考えることにした。
 その間にもくるくると包帯が巻かれる。まさか本当に臨也が治療を行ってくれるとは思っていなかった。恩を売っておくつもりだろうか。
 それでもいいや。そんな言葉がふと浮かんだ。どちらにしても臨也に色々世話を焼かれるというのはなかなかレアな体験だ。そのためなら後で何か言われても我慢しておこう。
「はい、終わったよ」
「ありがとうございます」
 三好が自分の身体を見ると確かにきちんと包帯が巻かれていた。臨也は意外と几帳面らしい。どうだと言わんばかりに得意気な顔をしている。三好はその顔をじっと見つめた。
「……ん? 何?」
 さすがに三好の一見無邪気な目に見つめられると居心地が悪いのか、臨也が視線から逃れようと立ち上がる。三好はその手をぱっと掴み、更に目を丸くして臨也を見つめた。
「さっきの続きですけど、なんで僕が臨也さんを助けたのか」
 一瞬眉をひそめた臨也もその言葉で曖昧に頷いた。とっくに話は終わったと思っていたらしい。しかし三好の答えに興味があったのだろう。甘んじて手を振り解かず、三好の言葉の続きを待った。
 三好は特に表情を変えず、無感動に口を開いた。
「多分、臨也さんのことが好きだからだと思います」
 あまりにも普通の顔で三好が言ったので、臨也は一瞬意味を理解出来なかったらしい。ワンテンポ遅れてにやにやと笑いだした。
「へえ! 君が俺をねぇ……! まあ身体を張って助けてくれるくらいだから、よほど俺のことが好きなんだろうね?」
 意地の悪い笑みを浮かべ、臨也は鼻先がぶつかりそうな程にすっと顔を寄せた。三好をからかっているらしい。しかしそれらの言動は、ほとんど三好の予想通りだった。
 三好はにっこりと笑い、予め用意していた返答をする。
「はい、僕は人間全部を愛していますから、臨也さんのことも例外なく愛していますよ」
 三好の言葉に、臨也はきょとんとした表情で数度まばたきをした。まるで言葉の意味が分からない、というふうだ。
 三好も何も言わずじっと臨也の反応を眺めていた。臨也がそんな反応をするとは思わなかったので、内心は可笑しくて笑い出しそうだったのだが、我慢した。
 ――いつものこの人からは考えられないなぁ。
 まさかそんな子供じみた、どこか可愛らしい反応をするなんて。三好はついに我慢出来なくなり、くつくつ笑った。
「……それは奇遇だね。俺も全ての人間を愛しているからさ。三好君のことも含めてね」
 そこではっと我にかえったように、臨也が取り繕う。
 むっとした顔の臨也は今度こそ三好から離れようとしたが、そうはさせない。三好は屈託のない笑顔で臨也を掴んだままの手に力を込め、引いた。バランスを崩した臨也が三好の肩口でしたたかに額を打つ。三好は空いていた手も、臨也が逃げられないよう背中にまわした。
「何か期待しました?」
 再び至近距離になった臨也に、三好は満足げに微笑んだ。
 ――普段人間を愛してるだなんだって言ってるくせに、自分が言われたらあの反応なのか。
 何度思い出してもさっきの臨也の表情は笑いが込み上げてくる。もっとあんな顔が見たい。
 三好はくくくと笑って、文句を言いたげな臨也の口を自分の唇を塞いだ。
 臨也は相当驚いたのか目を白黒させている。先にからかった臨也にも非が無いわけではないのだが。
「……っどういうつもり、なのかな」
 ぱっと手を離して解放してやると、眉間に深く皺を刻んだ臨也と目があった。ほんの僅かだが、頬に赤みが差しているのは蛍光灯の加減だろうか。
 対照的に三好は満面の笑みを浮かべている。
「さっき言った通り、臨也さんが好きなんですよ」
 どうって言われても、そのままの意味です。
 三好が可愛らしく小首を傾げてみせると、臨也は呆れたように溜め息を吐いた。
 あの口の減らない臨也が、すぐに言葉を返さない。それだけで三好は満足だ。
「臨也さんが好きだから助けたし、キスもした。駄目ですか?」
 追い討ちをかけるように三好は悪びれもせず、けろりとして言った。
 甘い言葉も、三好の本性を知ってしまった今ではそのまま受け取れない。臨也はどこか苦々しい笑みを浮かべ、挑発するように三好の隣にぴたりとくっついて座り直した。
「本当に君は良くも悪くも、俺の予想とまったく違う動きをする……。いいだろう、三好吉宗君。乗ってあげるよ。誰も知らない君の本性を観察出来るいい機会だしね」
 三好より僅かに長身の臨也が、ほんの少し顔を上向き加減にする。そうすれば三好は自然に見下ろされる形になり、臨也の言葉も高圧的のものに感じる。余計な部分を削ぎ落とせば、素直な返事に変わるというのに。或いはそれを隠すためか。
 ――ああ、やっぱりこの折原臨也という人間は、なんて面白いんだろう!
 込み上げる可笑しさに耐えきれずにぷっと吹き出すと、同じく臨也もつられて笑った。
 そしてひとしきり笑った後、今度はどちらからともなく唇を重ねた。始めは探り合いながら、徐々に激しく。
 ――だって、自分のオモチャを他人に盗られるなんて、腹が立つじゃないか。
 食い合うような口付けの最中、そんなことが三好の脳裏に浮かんだ。自分が飛び出した理由がやっと分かった気がする。三好は思い付くまま臨也の服に手を滑り込ませ、あの時殴られていた腹部を撫で上げた。
「……随分元気なんだね、怪我人のくせに」
 臨也はぴくりと身体を震わせたが、すぐに不敵な笑みを見せた。お陰様で、と三好は内心毒づく。
「臨也さんのせいです」
「君が好き好んで勝手に殴られたんだろう? 何でも人のせいにするのは良くないよ」
 三好は心底困ったように苦笑した。少なくとも、そう見えるようにした。本当は面白くてたまらなかったからだ。
 ――そうこなくちゃ、つまらない。
 こちらの言葉に対する臨也の強気な返答。これほど愉快なものは無いだろう。やはりここに来てよかった。
「ひどいですよ」
 三好は笑いが止まらなくなりそうな心とは裏腹に、眉尻を下げ、まるで捨てられた子犬のような表情を器用に浮かべてみせた。



◇◆

 現在

「――その時思ったんです。やっぱり黙ってるなんて勿体無いなって。でも喋らない約束をしたから」
「それがどうして今回の騒動に繋がるのかな?」
 もっともな疑問を投げかける臨也に対し、三好は手にした携帯電話をちらりと見た。画面に表示されているのはダラーズのサイトだ。
「臨也さんにダラーズの話を聞いた時に思い付いたんです。僕も何か、虚構を現実にしてやろう、って」
 掲示板は相変わらずの賑わいを見せている。中には「実際に河童を見た」という書き込みまで登場し、また波紋を呼んでいた。
「この画面の中でのことなら、臨也さんにも負けませんよ」
 そう言って携帯電話を唇に押し当てながら、三好は悪戯っぽく笑ってみせた。
 彼が携帯電話やパソコンなどの機械に造詣が深いことは臨也も知っている。おそらくいつか臨也がダラーズに人を集めた時と同じ、或いはそれ以上の方法で情報を拡散させたのだろう。
 まったく、侮れない。敵になっていれば相当手を焼くことになっただろう。臨也は、今のところは敵ではないということに安堵した。もちろん警戒はしていなければならないが。
「ところでさ、三好君。どうして俺を河童なんて呼ぼうと思ったの? 生憎俺には皿も水掻きも付いて無いよ」
 臨也はずっと抱いていた疑問を三好にぶつけた。話題性のためかとも思ったが、それなら呼び方は他にもあっただろうに。何故三好が敢えてその呼称を使ったのかに臨也は興味があった。まさか何の意味も無く、思い付きで、ということは無いだろう。
 臨也の当然の疑問に、三好は可笑しそうにクスクスと笑った。
「河童って生き物は、人間の真面目に思うことをおかしがって、同時に人間のおかしがることを真面目に思うらしいですよ。正義とか人道とか、そういうのを聞くと腹を抱えて笑うらしいです。そのくせ、人間が好きでいつも興味津々で眺めている……」
 まるで臨也さんみたいでしょう。
 三好があまりにも可笑しそうに笑うので、臨也は黙り込んだ。気分を害されたからではない。思うところがあったからだ。
「……三好君は俺を何だと思ってるのさ? 俺はれっきとした人間だよ?」
 臨也が咎めるような口調で言うと、三好はスッと立ち上がった。そして臨也の隣に座るなり、手を伸ばして臨也の頭を撫でた。
 三好の行動は相変わらず突拍子もない。臨也は思わず身体を強ばらせる。
「確かにお皿は無い……」
 三好はさも不思議そうに目を丸くした。それでも撫でるのを止める気配は無い。恨めしげな臨也と目が合い、三好はにっこりと笑ってみせた。おそらく臨也をからかっているのだろう。
 三好はしばらくそうしていたが、不意にぴたりと手を止めた。
「……臨也さんも言って欲しそうだから、正直に言いますね」
 何を?
 眉間に皺を寄せた臨也の額に、背筋を伸ばした三好が唇を落とした。そして今までとはどこか違う笑みを浮かべてみせる。さっきまでの人懐っこい子供の笑顔とは違う、艶っぽい笑み。
「臨也さんが人間でも河童でも、僕の愛は変わらないですよ」
 臨也はなかなか反応を返さなかった。いや、返せなかったのかもしれない。
 そんな呆けた顔の臨也を見るなり、三好はケラケラと笑い出した。
「赤くなってますよ」
 とっくにいつも通りの笑顔に戻っている三好に、臨也は舌打ちをもらした。
 それが余計に面白かったのか、三好は涙が出そうなほど笑っている。三好はどうやら臨也の行動すべてがツボにはまるらしい。本当に面白くてたまらない、という様子だ。
 臨也は大きな溜め息を吐くなり、頬杖をついて明後日の方向を見た。
「そういう君こそ、河童みたいだけどね」
 それが臨也なりの返事だと気付くのに、そう時間はかからなかった。
 そんな難解な返答をせずに、もっと素直に言えばいいのに。三好は自分を棚に上げながらそう思った。
 ――僕が人間じゃなかったとしても、臨也さんは僕を観察せざるを得ないんだから。
 同類である限り、二人は互いに観察しあうことを止めないだろう。自分はこんなにも向こうが気になるのに、同類である向こうが自分を気にならないわけがない。
 三好はそう確信していたし、おそらく臨也もそうだった。
 ――これだから人間は面白いんだ。
 三好はくつくつと喉の奥で笑い、頬杖をついたままの臨也の横顔にもう一度キスをした。



◇◆



田中太郎【最近、本当にデジカメ持ってる人増えましたよね】
セットン【よく見ますねー】
セットン【公園とか、水のあるところは特に】
甘楽【あっ! もしかして例の河童騒動ですか?】
田中太郎【やっぱり皆さんご存知なんですね】
甘楽【そりゃあもう!】
甘楽【切り裂き魔事件以来の大事件ですから】
甘楽【知らない方がおかしいですよう!】
田中太郎【でも河童なんて本当にいるんでしょうか】
田中太郎【いても不思議じゃないですよね】
セットン【実際見たって人もいますしねー……】
甘楽【そんなの嘘に決まってますよ! う・そ!】
甘楽【写真も今のところ合成ばっかりだし】
甘楽【みんな共通の話題で盛り上がって遊んでるだけだと思いますよー!】
セットン【はあ……やっぱりそうですかね】
セットン【実は私の知り合いにも見たって言ってる人がいて……】
田中太郎【ええっ! やっぱり見た人いるんですか!?】
甘楽【何かの見間違いだと思いますよ!】
甘楽【あ、もしかしたら河童じゃなくて】
甘楽【地球侵略を企む河童型の宇宙人だったりして☆】
セットン【エッ!?】
田中太郎【それカエルだと思いますけどw】
甘楽【もしかしたらその知り合いの方もとっくにキャトられてて】
甘楽【脳に埋め込まれたチップで河童宇宙人の手駒になってセットンさんを……キャー!】
セットン【ひいいいいいいっ!】
田中太郎【甘楽さん、あまりセットンさんをおどかさないであげて下さい(笑)】
セットン【い、一応その知り合いに確認のメールしてみます!】

――セットンさんが退室されました――

田中太郎【セットンさん落ち着いてww】
田中太郎【あーいっちゃった】
田中太郎【甘楽さんがおどかすからですよ】
甘楽【ひっどーい! 軽い冗談じゃないですかー】
内緒モード 田中太郎【もしかして臨也さん】
内緒モード 田中太郎【何か知ってるんですか?】
内緒モード 甘楽【君に一つ教えてあげるよ】
内緒モード 甘楽【例えば俺が嘘を吐いたとして、それを誰もが嘘だと分かっているなら】
内緒モード 甘楽【それは畢竟正直と変わらない】
内緒モード 甘楽【本当に嘘吐きな人間は、そんなことを人に悟らせないんだ】
内緒モード 田中太郎【……何の話ですか?】
内緒モード 甘楽【分からないなら、そこが凄いところだよ】

――セットンさんが入室されました――

セットン【知り合いにメールしてみたら、それはないって笑われました……】
田中太郎【当たり前ですよ(笑)】
甘楽【あっ!】
甘楽【今度は私に電話がかかってきちゃいました】
甘楽【いい時間なのでこのまま落ちますね!】
田中太郎【了解です】
セットン【おやすー】

――甘楽さんが退室されました――

田中太郎【それにしても】
田中太郎【甘楽さんらしくないですね】
田中太郎【いつもならもっと食いついてくるのに】
セットン【確かに……】
セットン【珍しく全否定でしたね】
田中太郎【首無しライダーがいるんだから、河童だって当然いますよう!】
田中太郎【とか言いそうなのに】
セットン【あー言いそう言いそう】
セットン【でも甘楽さんの言うことも一理ありますし】
セットン【うーん……】
田中太郎【あ、私も朝早いのでそろそろ落ちます】
田中太郎【甘楽さんの言ってた通りいい時間ですし】
田中太郎【おやすみなさい】

――田中太郎さんが退室されました――

セットン【そうですね】
セットン【じゃあ私も落ちます】

――セットンさんが退室されました――



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