なう様 80000HIT リクエスト
「臨也がドン引きするくらいヨシヨシが好きな静雄さんのお話」






間の悪いことに、シズちゃんがいた。

「よぉ三好、今帰りか?」
「ええ、まあ。
静雄さんはお仕事ですか?」

しかも俺の今日の目的だった三好君に先に声をかけられてしまった。
これじゃ迂闊に近寄ることも出来ない。
今日この辺りにシズちゃんが来るなんて情報は無かったんだけどなぁ。
本当にいつも邪魔ばかりする。

「あ、ちょっとメールが……すみません」

ひとまず三好君にすぐ近くにいるとメールで知らせてみた。
三好君はすぐに了解の返事をくれた。
さて、どうしようか。
今回三好君を呼び出した理由は、シズちゃんのことだ。
最近三好君はあの化物とやけに仲がいいらしい。
そこに釘を刺すためだ。
もちろん三好君には言わないけど、逆に三好君を利用してシズちゃんを消せないか計画を練るためでもある。
なのに当のシズちゃんが一緒だというのは非常に邪魔だ。

「静雄さん、僕ちょっと待ち合わせをしてるんですが……」

と思ったら、早々に三好君が切り出した。
彼は意外とその辺りをうまくやってくれるので助かる。

「そうなのか……。
じゃあ、そいつが来るまでここにいてもいいか?」
「えっ」

えっ。
……さすがはシズちゃん、社交辞令が通じないらしい。
暗に帰れって言ってるのに伝わらなかったみたいだ。
三好君も若干笑顔がひきつっている。

「駄目か?
邪魔にならねぇようにすぐ帰るからよ」
「はぁ……」

残念ながら三好君は断りきれなかったようだ。
シズちゃんは嬉々として三好君に話しかけ続けている。
前向きに考えれば三好君の利用方法を考えたり、今後の計画を練る絶好のチャンスだけど、相手がシズちゃんじゃなぁ。
あんなの観察したくもない。
早く帰ればいいのに。
ていうか仕事しろ。

「そうだ三好!
鞄重くねぇか?
持っててやるよ!」
「いえ、大丈夫です」
「遠慮すんな。
学校帰りで疲れてんだろ?」

シズちゃんは突然そんなことを言いながら三好君の鞄を奪いにかかった。
一瞬俺とのやり取りの証拠でも押さえられるのかと思ったけど、シズちゃんは本当に鞄を持っただけだった。
もっとも、中を見られたとしても三好君のスマホはポケットの中だし、鞄には本当に勉強道具しか入ってないだろうけど。

「今日電子辞書とか入ってるんです。
そんな重いものを静雄さんに……」
「全然重くねぇから気にすんな。
それなら余計俺にまかせとけって」
「はぁ……じゃあ少しだけお願いします」

結局シズちゃんは三好君の鞄を持つことになったようだ。
三好君も困っている様子だ。
もしかして、シズちゃんが一方的に三好君に余計なちょっかいを出してるんだろうか。
確かに三好君は誰にでも優しいから勘違いしてるんだろう。
シズちゃんは頭まで可哀想だなぁ。

「三好、喉乾いてねぇか?」
「大丈夫です、ありがとうございます」

鞄持ちの次はパシリのようだ。
三好君に笑顔で断られて目に見えて落ち込んでるのがまた気持ち悪い。
三好君をどれだけ気に入ってるのか知らないけどさ、今までに無いベクトルでシズちゃんにイライラしてきたよ。
俺の愛する三好君にあんな見え見えの方法で近寄ろうなんてさ。
ああ、もちろん三好君が好きなのは、三好君が人間だからだけど。

「……それにしても、なかなか来ねえな。
三好を寒空の下待たせやがって……!
そうだ三好、どっか喫茶店とか行って待つか?
俺がおごってやるからよ」
「お気遣いありがとうございます。
そのうち来ると思うので大丈夫です。
……それより静雄さん、お仕事は……」

三好君は再びシズちゃんを追い払いにかかったようだ。
そうそう、三好君の言う通りだよ。
さっさとどこかに行って、出来たら二度と俺の前に現れないでくれると嬉しいんだけど。

「馬鹿、お前一人置いて行けるか!
こんなところで一人で待ってて、変な奴に声かけられたらどうすんだよ!
例えばお前を変な目で見る奴とか……いや、誘拐しようとする奴だっているかもしれねぇ……!
もしお前がそんな目にあったら俺は……」

シズちゃん、ブーメランって言葉知ってる?
シズちゃんは大声で三好君の可愛さについて力説しだした。
変な奴が自分だってことには気付いてないらしい。
ていうか、三好君が可愛いと思うのは別にいいけど、誘拐したいとかパンツ被りたいとかそういうのはやめようよ。
三好君もそれは引くと思うよ。

「……静雄さん……そんなに僕のことを考えてくれてるなんて……!」

あ、あれ?
……いやぁ、さすがは三好君だ。
スルースキルが高いなぁ。

「実はさっきから言おう言おうと思ってたんですけど……。
あっちの方からずっと視線を感じるんです。
もしかしたら静雄さんの言う変な人かも……。
すみませんが、見てきてもらえませんか!?」
「何ッ!?
待ってろ三好、そんな奴はぶっ殺してくる!」

ちょっと三好君、そっちは俺がいる方向だよ。
仕方ない、さっさと移動して……あれ?
三好君から電話?
……もしもし三好君?

『あ、臨也さん。
実はさっきから言おう言おうと思ってたんですけど……』

シズちゃんだけじゃなくて俺にも?
一体なんだい?

『今日は静雄さんが仕事の都合でこっちに来ない、って情報を流したのは僕なんです』

え?
……やだなぁ三好君、面白い冗談だね。
君がそんなことをして何の得が……

『僕と静雄さんってお付き合いしてるんですよ。
臨也さん、情報屋さんなのに知らなかったんですか?
まあ、確かに男同士だからおおっぴらに言ったりはしてないですけど』

……へえ、俺を騙してたってわけか。

『……騙してたって、まるで僕が臨也さんの仲間みたいに言わないで下さい。
僕がちょっと優しくしたくらいで勘違いして仲間面してくる可哀想そうなぼっちの臨也さんなんかと』

ちょっと三好君、大人に対してその口の聞き方はどうかと思うよ。
まあ、何もかも思い通りになる相手よりは面白いけどね!

「……やっぱり手前かぁ」

……っと。
やぁシズちゃん。
三好君にばっかり構ってる場合じゃなかったな。
まずはこっちをどうにか……

『静雄さーん!
助けて下さい!
臨也さんが涎を垂らしてハァハァ言いながら僕のパンツの色を聞き出そうとする電話をかけてきました!』

どうやらまだ電話が繋がっていたらしい。
三好君にもシズちゃんの声が聞こえたみたいだ。
三好君はそんなことを大声で叫んだ。
別に俺は三好君の下着の色なんてどうでもいいよ、シズちゃんじゃあるまいし!

「なん……だと……!?
この変態、ぶっ殺す!
三好のパンツの色は俺だってまだ見てねェんだぞオラァアア!」

そんな情報聞きたくないよ!
あとシズちゃんには変態って言われたくない!

『静雄さん……。
静雄さんにだったら僕、見せてもいいですよ……?』
「よっしゃああ!
待ってろ三好、こいつをぶっ殺したらすぐ迎えに行くからな!」

とりあえず精神衛生上、電話を切った。
もっと早く切るべきだったかな……。
シズちゃんは今だかつて無いレベルでテンション上がってるし……。
ここまで人間に関わりたくないと思ったのは初めてかもしれない。
三好吉宗、子供だからといってやっぱり侮れない存在だ。
これからはもっと警戒しておこう。

「待ちやがれこの変態野郎!
きっと毎日三好の登下校を後ろから付け回してるに違いねぇ……!
俺が毎日見守ってるのにその隙を突くとは……クソッ、三好は俺が守る!」

……シズちゃんは自分を省みようね。



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